粘土の版画
2019.9.10 -4歳児クラス- 社会福祉法人みわの会 千田保育園 美術の時間
今月の美術は版画です。版下を粘土で作ってみようという提案です。
こねて丸めて 平らに伸ばした粘土板に色々な素材で型押しします。繰り返し押すことで繋がった模 様のような表現や、何かの形に見立てたりと色々試せます。そこへスポンジタンポで 色付けし障子紙を被せて刷りとる、という流れです。
参考作品を見せたとき、同じ版 で色違いのものを同時に見せて、何か気がつく?と質問すると
「同じ形!」と気がつ いてくれました。版画の面白みを説明したつもりです。
その後、版を作るところから 刷りとるところまで一気にデモンストレーションをしました。
デモの途中で「早くや りたい!」との声。
では、粘土を配ります、余裕のある人は取りに来てくださいと言うと、さーっと素材のテーブルに人が集まってきました。粘土よりも使いたい道具や素材を手に一杯持っています。なおかつ粘土ちょうだい!と言う姿など印象的でした。もう持てないよね?と心の中でつぶやきながら、それは言葉にはせず言われた通りに渡します。そうすると、結構やりくりしてどうにかなる感じです、毎回。
また、粘土より先に 「絵の具欲しい!青!」とか訴える人もいました。「(絵の具の用意が間に合わず)粘土で型作って待ってて。絵の具は 用意して持って行くから」と言うも、わかった!と席に戻る人もいれば、絵の具を確実に手にするまでずっと待っている人も。
準備が整い制作となったとき、型押しというより素材を埋め込んで粘土造形になる姿が多数ありました。粘土を伸ばすために用意していただいたラップの芯ですら粘土に突き立てられ、割り箸や洗濯バサミまで粘土に取り込まれていました。紙に粘土を貼り付ける逆転現象的な行為もありました。驚きです。
型押ししたら面白い形が出そうだなと園からお借りした洗濯バサミは、繰り返し使うものなので取り外していただくようにお願いしました。その点は素直に了解していただけ、ほっとしました。
その、ほっとするって一体なんなんだ?と自分自身に問いかけながら、そのような状態なので紙に刷りとることをあえて提案する必要性に疑問を抱きつつ、でも、念のため聞いて回って、やってみる!と言ってくれる優しい人に出会ってまたほっとしました。(ここでほっとする自分もなんなんだ?と思いつつ、、)
粘土に色を塗ったり素材を埋め込んでみたりすることが面白かったのだろうなと全体を見渡して思いました。立体作品はクラスの棚に飾りました。途中で試しに刷りとってみた紙にはあまり興味が無い人もいましたが、色画用紙の台紙に貼ってみるとなかなかかっこよく、こちらは廊下に展示しました。
制作直後は自分の作品をいらない!と捨ててもいいような素振りを見せていた人も、壁に作品群が飾られると、俺のはどこ?と探し始める不思議。この年代を生きる人のたくさんある謎の生態の一つです。テーブルに放置され打ち捨てられたように見える作品も、それに自分の心が動かされたなら、大切に確保して飾ることにしています。絵の具まみれの床を拭いたりしていて、そんな余裕がいつでもあるわけではありませんが、自分が試し描きした画用紙を誰かから「素敵だからちょうだい!」って言われたら、私はとても嬉しいと思うからです。