保育園の美術の時間では、こちら(保育士さんや私などの周辺の大人)がテーマを提案し、それに添った材料を準備して場を設定します。

3歳児クラスで「手に描くモノプリント」の提案。モノプリントなので版画にすることころまでを制作テーマとしました。ボディペイントされている少数民族の画像をいくつかみんなで見ることから始めました。自分のからだの一部に直に絵を描くことについて3歳の人たちはどう感じるかな?たずねてみました。

「怖い!」「昔の人みたい」「これは怖くない」「パンダ?」などの声。

普段あまりというかほぼ馴染みの無い人間の姿をみんな真剣に見てくれていました。

その印象を持ちながら、手のひらに模様を描くことのデモンストレーション。じーっと見ています。その模様を紙に押し付けてうつしとるところまで始めに一気に見てもらいました。

さて、子どもたちの姿といえば、

大人の設定したテーマに響いてそれをやってみる人ももちろんいましたが、それ以外のことを試す姿が多く見られました。

手の窪みのところだけに色を塗って刷る、丁寧に模様を描く、パレットで全部を混ぜて手のひらのみならず腕まで塗る、手に描くけど刷らない、じっくり描いて一枚だけ刷って終わる、紙に押し付けた手を前後にこする、手の甲にも描く、手に描くのはもうやらないと言い牛乳パックパレットに描く、絵の具が水に流れていく様を観察する、など。今まで絵の具が苦手だった子どもも手のひらに描いていました。

振り返りで担任の先生からこんな言葉が出てきました。

「美術のテーマが子ども一人一人のテーマとは違うんだな、と思いました。違ったなりのその子との付き合いを見ていけたらいいな。」

「あそこであの子はあれがやりたかったんだろうな。こちらにもう少し余裕があれば、その話の続きを聞いてあげられただろうな」

↑同じ時空間で生み出された2人の異なる作品です。

左側のような姿を見ると安心感が生まれ、右側のような姿には不安感が💦それはほとんど自分の中の問題だろうな、と薄々気がついてはいるのですが、担任の先生がおっしゃるように、テーマがそれぞれ違うんだっていう前提に立ち戻れば、また、少しの余裕があれば、手に描かなかろうが版画にしなかろうが、それはたいした問題じゃないと思えます。

大人がこだわるポイントがズレると、子どもたちにとっては大変迷惑なハナシなんだろうな、と。

それは、大人の社会でも十分あり得ること、というのが怖いところですが💦

1ヶ月前の美術の時間も絵の具で違うテーマ。その時の「研究」を再開したいと言って、同じ環境を自ら作りあげた男の子。観察する姿がなんとも愛おしくて、その姿に見入ってしまいました。

次回はどんな姿を見せてくれるのか、とても楽しみです。