普段の遊びで粘土が人気だということを伺い、ならば、いつもと違った粘土でどうでしょうか、という流れで、立体制作をする提案をしました。日常の遊びで取り入れている粘土は手にはべとつかず硬化もしない白い粘土です。今回用意していただいた粘土は赤茶色、手にベトベトついて、時間が経つと硬く乾燥してくる素材です。
私が教室へ入ると開口一番「今日は絵の具使うの?」との声。
今日は粘土だから、使うつもりはないけれど。。。
そういう時どう答えるかいつみ悩みます。そのつもりは無いけれど、使いたいという要望があれば断る理由は無いからです。
縄文時代の土偶の写真をたくさん見ました。見慣れない形や顔の表情に「気持ち悪い」なんていう感想もありました。
デモンストレーションで、粘土の塊をぎゅっと握ってパッと離して出てきた形から顔を見つけてそこからスタートしてみてはどうか?という提案をしました。
まずは感触の違いに戸惑いや驚きの声があがりました。
絶対に触りたくない!と最後まで手に触れない人もいました。
乾燥を防ぐために用意していたラップにくるんだまま渡すと、その上から恐る恐る触ってみる姿もありました。
後半まで様子を見ていて、みんなが他の遊びに移行していったころに、もう少ししたらやってみたい、とこっそり言いにくる人もいました。
早々に、できた!と完成品を持ってきて、さっさと積み木遊びに移る人。
たくさん作ったんだけど、作品はこれだけ!と、小さな塊を持ってくる人。
1時間近く取り組んだけれど納得いかなくて「今日はやんない!やんないの」と言いにくる人。
通常、こちらの保育園の美術の時間では、その日のその人の様子が一番に尊重されます。
ですから、時間や空間の制限はとても緩やかです。
何を目安にその時間が終わるかというと、最後の一人が切り上げた時間です。
ほかの遊びから戻ってきた数人の男の子が言いました。
「今日は美術じゃなかったね、粘土美術だったね」と。
なかなか興味深い発言です。
彼らにとって「美術」と「粘土美術」は違うという認識のようです。
ならば「美術」ってなんなのだろう?
問いは続きます。
お読みくださりありがとうございました。